田原総一朗です。
映画『宝島』を観た。
とても迫力のある映画で、
3時間11分が、
あっという間だった。
物語の舞台は、
戦後アメリカ統治下の
沖縄コザ市(現沖縄市)だ。
嘉手納基地と隣り合う、
この街に「戦果アギヤー」
と呼ばれる若者たちがいた。
彼らは、
基地から物資「戦果」を奪い、
貧しい人々に分け与える。
もちろん犯罪だが、
れっきとした史実らしい。
その仲間のリーダー的存在が
忽然と姿を消し、
残った仲間がその行方を捜す。
驚きの結末が待っているのだが、
そこは映画を観ていただくとして……
僕が驚き、感心したのは、
ストーリーのおもしろさと、
戦後沖縄の、
強い憤りの歴史を描くことが、
みごとに共存していることだ。
僕も沖縄問題を
何度も取材しているし、
わかっていると思っていた。
しかし、まだまだ細かい歴史、
市民の微妙な感情などを
理解していなかったと、実感した。
米兵の悪事をののしりながら、
客の米兵が店にやって来ると豹変、
満面の笑顔で迎えるホステスたち。
印象的だった。
そうやって生きるしかないのである。
レイプ、殺人、交通事故……
数々の米兵たちの犯罪は、
日本側には裁けない。
米軍機が小学校に墜落し、
子どもたちが犠牲になる。
ベトナム戦争が起き、
沖縄を飛び立った爆撃機が、
北ベトナムを破壊する。
そして、基地に毒ガスが
隠されていたことが発覚。
市民の憤りは最高潮に達し、
コザ騒動が起こるのだ。
米兵が起こした交通事故に端を発し、
放火、投石、車を横転させるなど、
市民による暴動が、
深夜から朝まで続いた。
沖縄の怒りを象徴するような、
迫力満点の映像だった。
監督の大友啓史氏に挨拶したところ、
「朝生」のファンだとおっしゃる。
以前ドラマ『龍馬伝』を手掛けたとき、
「朝生風に台本なしで
殺陣をやらせたんです」と
おっしゃってくれた。
「朝生風」の迫力が、
このシーンにも役立ったなら、
うれしいかぎりだ。
印象に残るセリフが
いくつもあった。
「沖縄は日本に見捨てられたんだ」
「日本に戻ることが幸せなのか」
そして、主人公のグスクの言葉に
胸が痛んだ。
「こんなこと続くはずがない。
20、30年経っても
まだ戦争をしているようなら、
人間は終わりだ」
残念で悔しいけれど、
今も世界で戦争はなくなっていない。
そして沖縄にいまだに基地がある。
戦後の沖縄を
体感しているような映画だった。
特に若い人たちに観てほしい。
そして、石破首相に
ぜひ観ていただきたい。
石破さんは、総裁選前に
「日米地位協定見直しを
やるべきだ」と言っていたので
期待していた。
退陣する事になり残念だが、
今後もこの問題に取り組んで欲しい。