舛添要一都知事辞任に、僕はこう思う

6月15日、舛添要一東京都知事が辞意を表明した。僕は、舛添さんをマスコミに引っ張り出した張本人といっていいだろう。今回も、さまざまなメディアからコメントを求められた。僕なりに、舛添さんについて思うところはある。

僕がたいへん信頼していた人物で、高坂正堯さんという国際政治学者がいた。僕が司会をつとめていた報道・政治討論番組「サンデープロジェクト」や「朝まで生テレビ!」にも、しばしば出ていただいた。

その高坂さんが63歳という若さで亡くなったとき、彼のあとを継ぐ学者を探さなければならなかった。そんなときに白羽の矢がたったのが舛添さんだった。高坂さんのようなリベラル派ではなく、まったく違うタイプだが、魅力的な若手学者だった。国際政治に詳しく、世論に迎合せず、発言もはっきりとして歯切れがいい。「これはテレビでも受けるだろう」、と彼に会ってすぐに僕は直感した。

実際、舛添さんは「朝まで生テレビ!」に出演すると、大島渚さん、野坂昭如さん、小田実さんなどの手強いベテラン出演者たちにひるむことなく、論戦を繰り広げた。

当時の知識人は、「日本がいかにダメか」と、日本の弱点を語る人ばかりだった。そのようななかで、舛添さんは日本のよさを論理的に語った。だから、彼はまたたくまにメディアの売れっ子となったのだろう。

人気者になった舛添さんは、政治を語るだけではなかった。政治の世界に入ったのだ。語る側から、政治をおこなう側になった。天下を取りたい、と思ったのかもしれない。

彼は自民党から出馬し、国会議員となり、厚生労働大臣を務める。第一次安倍内閣では、改正憲法草案の作成にも参加した。自民党の中心人物の一人だったといえよう。

ところが、2009年に自民党が野に下ったころから、執行部への批判を繰り返すようになる。そして、ついに2010年4月に離党。これは、舛添さんが「自信過剰」のあまり、「そそっかしさ」が出たのだと僕は思っている。戦略がないのに離党したのだ。だから、新党を結成したものの挫折している。

ところが、猪瀬直樹さんが東京都知事を辞任すると、裏切られた格好の自民党が、舛添さんに声をかけたのである。彼は立候補して、見事に当選する。そして知事の職を順調に務めていたはずだった。だが、そんな順風満帆なとき、今回の政治資金問題が起きたのだ。

この問題にもまた、舛添さんの「自信過剰」ゆえの「そそっかしさ」が出たのだと僕は思う。公私混同だと批判されたけれど、政治資金規制法には違反していない。これなら追及はかわせるはずだ……。そういう「自信」があったのだろう。

だが、現実は思うようにいかなかった。彼が説明すればするほど、「弁解のための弁解」にしか聞こえない。その苦し気な表情が、刻々とテレビに映し出されただけだった。

世論は彼の弁明をまったく受け入れなかった。当初、舛添さんを支えようとした自民党も、このままでは参議員選挙に悪影響が出ると判断するようになる。そして、バッサリと切り捨てたのだ。

舛添さんは、さぞかし忸怩たる思いを抱いたことだろう。一方、舛添さんを切り捨てた自民党も、次の候補者選びに苦労するだろう。自民党が独自の候補を立てられるかどうか、微妙なところだ。

それにしても、と僕は思う。舛添さんは、かつて、テレビというメディアを足場に、颯爽と世の中に躍り出た。そして、いま彼は、テレビというメディアの力によって失脚したと言っていいだろう。皮肉なものだ。彼の出発点を知るものとしては、なんともいえない気持ちになるのである。

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技術の発達で人は死ななくなる!? iPS細胞の技術の進歩で、医療に求められるものとは?

最近、バイオ関連の研究、なかでもiPS細胞に関心が集まっている。僕もおおいに興味を持ち、さまざまな人に話を聞いている。

動物の細胞は、受精卵が分裂し、心臓や肺、肝臓などのさまざまな器官へと専門化して、やがて分裂が止まる。こうして身体が完成するわけだ。一度、専門化した細胞は、ほかの器官に変わることはない。

ところが、iPS細胞は違う。非常に単純な言い方をすれば、iPS細胞はどんな器官にでもなることができる。iPS細胞は、病気やケガで失われた機能を再生する可能性を秘めているのだ。

2006年、京都大学の山中伸弥教授が、マウスの細胞からiPS細胞を作り出すことに成功した。その成果が認められ、山中さんはノーベル賞を受賞した。

2014年には、加齢黄斑変性の患者にiPS細胞を移植した。世界初の試みである。今後、ほかのさまざまな難病の治療にiPS細胞が役に立っていくだろう。このように医療技術は進歩していく。

一方で、今後、さまざまな問題が起きるだろう。たとえば、一民間会社がiPS細胞関連の技術を独占する、というようなことになったとする。すると、どうなるか。もし、ある病気の特効薬ができたとしても、庶民にはとても手の届かない価格になることもあり得るのだ。

実際、再生医療ではないが、同様の事例がすでに出てきている。肺がんが、6~7割、治るという薬があるのだが、その薬を使って治療すると、1人年間3500万円かかる。保険でカバーすると、健康保険制度が破たんしてしまう。保険外となると、金持ちにしか支払えないほどの高額治療になる。金持ちだけが長生きするという社会でよいのだろうか。

医療が発達すればするほど、人はどんどん死ななくなる。健康保険制度の破たんは必至だ。たとえば、80歳以上の再生医療には保険を適用しない、などといったルール作りが必要になるかもしれない。

今後、科学技術の問題は、倫理とより密接に関わってくる。とくに、医療やAI(人工知能)の活用を考える際、倫理が重要になる。だが、現在は技術の進歩のスピードに倫理面の議論が追いついているとは、とても言いがたい。今回、iPS細胞についての取材中、僕はそう強く感じたのだ。

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失業者735万人の時代が来る? 安倍首相が「一億層活躍社会」を叫ぶ理由とは?

「一億総活躍社会」の実現に向けた工程表が、6月2日、閣議決定された。ところで、「一億総活躍社会」とは、どんな社会なのか、具体的に何をすれば実現できるのか、国民の多くが疑問に思っているのではないだろうか。そこで、この「一億総活躍社会の実現」の責任者である加藤勝信・一億総活躍担当大臣に僕は話を聞いた。

2015年度の日本のGDPは、約500兆円。2020年までに約600兆円にすると政府は目標に掲げている。この100兆円は、どうやって伸ばすのか。

まず、ビッグ・データや人工知能(AI)で、第4次産業革命を起こす。ここで約30兆円を見込む。次は、いま日本のGDPの約7割を占めるサービス産業、これもまたAIを使って活性化させる。ここでも約30兆円を伸ばす。ほかに保健、医療、医薬品分野で約10兆円だ。

そして、「観光」である。2015年、日本を訪れた外国人観光客は約2000万人だった。これを4000万人、さらには6000万人にしようというのだ。円安効果や東京オリンピックもある。大幅な増加を実現できると踏んだのだろう。観光で、やはり10兆円の伸びを見込んでいる。

そして、なんと、これらの方策を実現させないと、2030年には約735万もの人が仕事を失う、と推測されているのだ。だが、これらの目論見がうまくいけば、失業者は161万人ですむ。

たとえ161万人におさえられたとしても、たいへんな数字ではないか、と僕は驚いた。だが、今後の人口減少を勘案すると、妥当な数らしい。

安倍首相は、これらの産業を発展させないといけない、という強い危機感を抱いている。「日本の企業が世界の下請け化する」と懸念しているそうだ。にわかには信じがたい話だが、一部の産業ではすでに、「日本の下請け化」は進んでいる。

例えばゲーム産業だ。かつてニンテンドーやソニーはゲーム機を開発し、魅力的なソフトをたくさん作って世界を席巻した。世界のゲーム産業を牽引し、我が世の春を謳歌していたのだ。ところが、いまや、アップルのiPhoneが代表する、「スマホ」の時代である。ゲームをしたい人は自分のスマホにインターネットを介してダウンロードすればよい。ニンテンドー、ソニーの時代は終わったのだ。ゲームはインターネットの時代に移った。そのインターネットの中心にいるのはグーグルである。

日本経済の屋台骨を支えてきた産業のひとつが、トヨタ、ホンダ、日産といった自動車産業だ。だが、この自動車産業も、近い将来、グーグルが産業の中心になる恐れがある。

グーグルは、「自動運転」の研究を世界に先駆けて始めている。すでに2010年には、自動運転車を発表しているのだ。ゆくゆくは、自動運転ソフトの世界基準を作ろうとしているそうだ。危機感をおぼえたトヨタは、巻き返しをはかろうと2016年1月、シリコンバレーに研究施設を設立している。

当然ながら、経産省もこうした危機感を共有している。省内の資料には、日本産業の「小作人化」という強烈な表現さえつかわれている。

世界の苛烈な競争のなかで、日本は生き残れるのか。失業者161万人という理想に、うまく着地できるのか。帰趨は、企業の力はもちろんだが、政府の政策にかかっている。

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沖縄の人は、本当は何に怒っているのか?

沖縄で痛ましい事件が、また起きた。沖縄県うるま市で、4月28日夜から行方不明になっていた女性が、遺体で発見されたのだ。5月19日、沖縄県警に死体遺棄容疑で逮捕されたのは、元米海兵隊員で米軍嘉手納基地で働く、32歳のアメリカ人男性だった。女性を暴行し死亡させ、死体を遺棄したことを認めた。容疑者は「軍人」ではないが、軍で働いている「軍属」だ。

国土のわずか0.6%の面積に、在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄では、米軍人や軍属の犯罪が後を絶たない。なかでも1995年におきた、「沖縄米兵少女暴行事件」は沖縄県民の間にくすぶっていた不満を一気に爆発させた。海兵隊員2名と海軍軍人1名による、12歳の女子小学生への集団暴行という、あまりにもむごたらしい事件だ。

そして、沖縄県民をさらに怒らせたのは、「日米地位協定」の存在だった。「米軍人・軍属が事件や事故を起こしても、被疑者が公務中の場合、捜査権と第1次裁判権は米軍側にある」というものだ。事件への関与が明らかであっても、起訴されるまで、日本の警察は容疑者を拘束できない。この少女暴行事件の場合、日本側で裁判は行われた。だが、容疑者たちの身柄は日本側に引き渡されなかった。そのことが、沖縄の怒りに油を注ぐことになったのだった。

今回の事件の場合、容疑者は軍属だ。公務外ではあるが、もし米軍基地内に容疑者が逃げ込んでいたら、身柄が渡されなかった可能性もあるという。

翁長雄志沖縄県知事は、安倍首相に日米地位協定の見直しを求めた。伊勢志摩で行われるサミットの際、オバマ大統領に直接、要請してほしいと述べたのである。だが安倍首相は、米国側に抗議はしたものの、地位協定改定に触れることはなかった。

今回の事件で、地位協定は適用されていないため、官邸は、協定の改定まで求めるのは不適切だという政治判断をしたのだろう。これは常識的な判断かもしれない。しかし、翁長知事にとってはそうではなかった。

この安倍首相の対応に、知事は、そして多くの沖縄県民は、本土と沖縄との感情のかい離を感じたことだろう。ますます広まってしまった、政府と沖縄との距離に僕は強い懸念を感じるのである。

自民党で幹事長まで務めた野中広務さんは、橋本内閣、小渕内閣のとき、沖縄のすべての島を訪ね歩いた。そして、地元の人と何度も何度も酒を酌み交わしながら、とことん話し合ったという。このようにして、沖縄の人たちの信頼を勝ち取っていったのだ。いま、野中さんのように、沖縄に足しげく通って、基地問題に腰を据えて取り組む国会議員がなぜ出てこないのか。

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北朝鮮「弱者の恐喝」作戦がつく米中の弱点とは?

北朝鮮がミサイル実験、核実験を繰り返している。2015年5月には、「水中から潜水艦発射弾道ミサイル発射に成功」、今年1月に原爆の実験を「水爆実験成功」、そして2月に「米国に届くミサイル実験が成功した」と報じている。

報道の通りならば、北朝鮮は核兵器保有国になったことになる。当然のことながら、日本はもちろんのこと、各国は危機感を強めている。北朝鮮は世界を挑発しているのだ。

北朝鮮は、なぜこのような行動を繰り返しているのか。僕は2つ要因があると考えている。ひとつ目は、アメリカに向けての行動だ。2006年10月9日、金正恩の父である金正日は初めての地下核実験を行なった。この金正日の「脅し」によって、アメリカは話し合いのテーブルについたのだ。金正恩の今回の実験もまた、同じようにアメリカに対するアピールなのだろう。アメリカに振り向いてほしい、テーブルについてほしいのである。

2つ目は中国に対してである。北朝鮮は、中国の援助なしには国が立ち行かない。これまでずっと中国の援助を受けてきたが、いま両国間のルートは絶たれている。中国に太いパイプを持っていた張成沢を、金正恩が処刑したからだ。張成沢は金正恩の叔父で、北朝鮮のナンバー2と目されていた。

援助が絶たれ、困窮した北朝鮮は、逆に、中国に対して脅しをかけているのだ。「弱者の恐喝」である。なぜそんなことができるのか。中国にとって北朝鮮は「なくなっては困る国」だと、北朝鮮自身が知っているからだ。

韓国と北朝鮮が統一されれば、朝鮮半島は民主主義の国家となるだろう。そうすると、中国は民主主義の国と国境を接することになる。つまり、中国にとって北朝鮮は、「防波堤」として、なくてはならない国なのだ。だから「駄々っ子」のように、北朝鮮はミサイル実験や核実験を繰り返している。いったいその「駄々っ子」はいつまで続くのか。

5月26日と27日に伊勢志摩で、G7先進国首脳会議が開かれる。もちろん北朝鮮問題も、主要議題になるだろう。北朝鮮に対して、先進各国でどのように話し合われ、どんな対策がとられるのか、僕は、期待とともに見守りたい。

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