北朝鮮「弱者の恐喝」作戦がつく米中の弱点とは?

北朝鮮がミサイル実験、核実験を繰り返している。2015年5月には、「水中から潜水艦発射弾道ミサイル発射に成功」、今年1月に原爆の実験を「水爆実験成功」、そして2月に「米国に届くミサイル実験が成功した」と報じている。

報道の通りならば、北朝鮮は核兵器保有国になったことになる。当然のことながら、日本はもちろんのこと、各国は危機感を強めている。北朝鮮は世界を挑発しているのだ。

北朝鮮は、なぜこのような行動を繰り返しているのか。僕は2つ要因があると考えている。ひとつ目は、アメリカに向けての行動だ。2006年10月9日、金正恩の父である金正日は初めての地下核実験を行なった。この金正日の「脅し」によって、アメリカは話し合いのテーブルについたのだ。金正恩の今回の実験もまた、同じようにアメリカに対するアピールなのだろう。アメリカに振り向いてほしい、テーブルについてほしいのである。

2つ目は中国に対してである。北朝鮮は、中国の援助なしには国が立ち行かない。これまでずっと中国の援助を受けてきたが、いま両国間のルートは絶たれている。中国に太いパイプを持っていた張成沢を、金正恩が処刑したからだ。張成沢は金正恩の叔父で、北朝鮮のナンバー2と目されていた。

援助が絶たれ、困窮した北朝鮮は、逆に、中国に対して脅しをかけているのだ。「弱者の恐喝」である。なぜそんなことができるのか。中国にとって北朝鮮は「なくなっては困る国」だと、北朝鮮自身が知っているからだ。

韓国と北朝鮮が統一されれば、朝鮮半島は民主主義の国家となるだろう。そうすると、中国は民主主義の国と国境を接することになる。つまり、中国にとって北朝鮮は、「防波堤」として、なくてはならない国なのだ。だから「駄々っ子」のように、北朝鮮はミサイル実験や核実験を繰り返している。いったいその「駄々っ子」はいつまで続くのか。

5月26日と27日に伊勢志摩で、G7先進国首脳会議が開かれる。もちろん北朝鮮問題も、主要議題になるだろう。北朝鮮に対して、先進各国でどのように話し合われ、どんな対策がとられるのか、僕は、期待とともに見守りたい。

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米国内のタブーを破る広島訪問、オバマ大統領は何を語るのか?

アメリカのバラク・オバマ大統領の広島訪問が決まった。この報道を聞いたとき、僕は約20年前に開かれた、ある公開討論会を思い出した。メンバーはキッシンジャー元米国務長官、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領、中曽根康弘元首相。そうそうたる顔ぶれだった。

司会を務めた僕は、キッシンジャー氏に「アメリカは1945年8月、広島と長崎に原子爆弾を落とし、20万人以上の犠牲者を出した。その責任についてどう考えているか」と、尋ねた。キッシンジャー氏はしばらく考えたあと、「トルーマン大統領がもし原爆を投下しなかったら、日本は本土決戦になるまで降伏しなかっただろう。その場合、日本人は数百万人、アメリカ側にも多くの犠牲者が出たはずだ。原爆を投下したことで、終戦を早め、犠牲者を減らすことができたのだ」と答えたのだ。

僕は、さらに質問を重ねて、「早く終わらせることができたかもしれない。しかし原爆投下によって、何の罪もない一般市民が少なくとも20万人以上死んだ。その責任はどうするのか」と尋ねたところ、キッシンジャー氏は困惑した表情を見せ、結局、何も答えなかった。

アメリカは歴史上唯一、核兵器を戦争で使用した国だ。アメリカにとって「ヒロシマ」と「ナガサキ」はタブーなのだ。原爆が戦争終結を早め、多くの人を救ったのだというキッシンジャー氏の説明は、アメリカでは決して暴論ではない。いまだアメリカの多くの人たちが支持をするアメリカの「常識」なのだ。

これまでアメリカ大統領は誰一人、広島と長崎を訪問していない。今回のオバマ大統領の広島訪問も、米国内の反対は相当強かったようだ。そんな事情もあり、外交筋によると、「謝罪はしない」「被爆者とも会わない」という2点は決まっているという。

しかし、それでもオバマ氏の広島訪問は、米国政治のタブーに対する挑戦である。これは大きな前進だと、僕は思う。オバマ大統領が広島で何を語るのか、思いをどう表現するのか、僕たちは見守らないとならない。

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電波でなければ規制もない!?「スマホで“朝生”」は、テレビの何を変えるのか?

放送開始から29年間、僕が司会をしてきた「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)が今年、新たな時代を迎えることになった。ネットテレビ局「AbemaNews」の開局スペシャルとして、4月18日午後9時から3時間の生放送を行ったのだ。タイトルは「スマホで“朝生”」。

インターネットでの動画放送といえば、ニコニコ動画などがある。だが、この「AbemaTV」は会員登録の必要もない、24時間無料放送の画期的なテレビ局だ。

スマホで視聴した人たちの声によると、画像も音声も安定しており、地上波の放送と変わらなかったという。

今回のテーマは、「人工知能、ロボットが働く未来…ド~なる仕事、ド~するライフスタイル?!」である。堀江貴文さん、夏野剛さん、成毛眞さんら、IT系企業の出身者や、起業家の駒崎弘樹さん、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん、国際的に活動する社会起業家の牧浦土雅さんなど、若手を中心に、個性的な面々が集まってくれた。

「人間がAIに取って代わられる職業は何か?」という話題に対する堀江さんの指摘がたいへん興味深かった。「経営者こそAIに取って代わられやすい。リスクを恐れ、リスクを取らないからだ」と言うのだ。

人間はAIと違って「感情がある」。たとえば、介護や看護といった仕事は、この感情を必要とする。だから、こういう仕事では、AIが人間に取って代わることは難しいだろう。だが、この感情が悪い方向に働く仕事がある。

実は、経営判断というものは、感情が悪い方向に働くそうだ。失敗したらどうしようという恐れから、新しいチャレンジを避けたりする人は、無難な経営しかできなくなるのだ。「AIに経営判断させたほうがいいんじゃないか」という結論に至るのは、それが理由だ。もちろん100%あてはまるわけではない。それでも、経営者はこの言葉に耳を傾けてもよいのではないだろうか、と僕は思った。

このように、出演者たちは常識にしばられず、とてものびのびと話しているように感じた。僕自身も、この番組の議論をとても楽しんだ。

僕は1964年の東京12チャンネル(現テレビ東京)開局と同時に入社、ずっとテレビの世界で生きてきた。フリーになった後も含めて、テレビの世界を中心に生きてきたのだ。

情報発信の場といえば、かつては新聞や雑誌、書籍といった印刷物であった。そしてラジオ、テレビがそこに加わった。だが、インターネットが登場して、情報の動きかたが変わった。人びとは電波を使わずとも、SNSなどで自由に情報発信できるようになった。もちろん、それに伴ってさまざまな問題も起きているが、こうしてネットで生放送ができるようになった現代は、すばらしい時代だと僕は思う。

「電波」は使える枠が決まっているからこそ、監督官庁が必要だ。そのために「電波法」があり、規制も受ける。高市大臣のあのような「発言」も生まれた。しかし今回のような番組が成立するなら、これまでの規制にとらわれることはなくなる。「テレビ新時代」だ。それを改めて実感し、僕はワクワクしてしまったのである。

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鈴木敏文セブン&アイ会長は、なぜ辞任したのか?

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長(CEO)が辞任を表明した。鈴木さんがイトーヨーカ堂に入社したのは1963年。その後、アメリカでコンビニエンスストアに出会う。この業態を日本で展開すると決意し、1973年、「セブン-イレブン」の事業ライセンスを得て、翌74年、国内1号店をオープンさせた。

当時は大型店全盛の時代である。「コンビニなんて日本では成り立たない」と言われたという。しかし、鈴木さんの読みは正しかった。いまやコンビニは日本人にとってなくてはならない存在、あって当たり前の存在になっている。生活インフラと言ってもいいだろう。鈴木さんはいつしか、「流通の神様」と呼ばれるようになった。

セブン-イレブン・ジャパンの社長だった井阪隆一さんの辞任を求める人事案を鈴木さんは提案した。ところが、それが否決された。そこで彼は、自身の辞任を決めたそうだ。会見でも、鈴木さんは井阪社長の経営手腕を強く批判していた。いったい何があったのか。

周辺に取材したところによると、どうも鈴木さんが次男を後継者に、と画策したようだ。鈴木さんの次男の康弘さんは、セブン&アイ・ネットメディア社の社長を経て、昨年5月にセブン&アイ・ホールディングスの取締役に就任している。いずれの会社も関連会社だ。

これは事実上の「後継者指名」だったと言われる。鈴木さんは世襲を否定しているが、周囲から見ればやはり「世襲」である。鈴木さんは83歳だ。昨年秋、病に倒れたことも影響したのだろうか。彼は、井阪社長更迭を画策したが、創業者である伊藤雅敏名誉会長が反対した。取締役会で人事案は否決されたというわけだ。

僕は、鈴木さんを何度も取材したことがある。鈴木さんは、味を確かめるために、昼ごはんは毎日セブン-イレブンの弁当を食べていると話していた。押しも押されぬ一流の経営者が、毎日コンビニの弁当を食べるというのだ。僕はとても驚いた。けれど、さすが「流通の神様」だと感じ入った。情熱、執念のようなものさえ感じたのだ。

その鈴木さんが、我が息子を後継者にしたいばかりに、無茶な人事案を出したというのか。鈴木さんのこんな引退劇を誰が予想したというのか。「鈴木さんほどの経営者でも、やはり人間だったのだな」というのが、僕の偽らざる感想だ。人間は強くて弱い。しかし、だからこそおもしろい。

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断崖絶壁に立つ中国経済、ソ連崩壊の二の舞はあるのか?

東京では、桜が散り始めた。僕は風流なものに疎いほうだが、とあるニュースには驚いた。今年、花見をするために日本にやってくる中国人が急増している、というのだ。「爆買い」だけではなく、花見にまで中国人が押し寄せている。

しかし、海外旅行を楽しむ中国の庶民とは裏腹に、中国経済には刻々と危機が迫っているようだ。4月2日放送の「激論!クロスファイア」では、この中国の経済問題について激論をした。話をうかがったのは、元通産官僚で現代中国研究家の津上俊哉さんだ。『巨龍の苦闘 中国、GDP世界一位の幻想』という著書を昨年5月に出している。

2008年のリーマン・ショックのあと、世界中で同時不況が起きた。そんななか、中国は、いち早く景気を回復させた。その中国が、いま、「断崖絶壁に立っている」状況だと津上さんは言う。

中国はリーマン・ショック当時、約4兆元(当時、約57兆円)規模の超大型の景気刺激策を行った。その大部分を占めたのは公共投資だ。同時に、空前絶後の金融緩和も行った。これらの政策は、設備、不動産などへの爆発的な投資ブームを起こす。当時、中国は9~10%の経済成長を維持していた。

言うまでもなく、リターンがあってこその投資であるが、それにもかかわらず、実際はリターンが見込めない、「名ばかり資産」がほとんどだという。投資した金額は負債であるから、最終的には返済しなければならない。だが、リターンがなければ、返すことなどできないのだ。

津上さんは前出の著書の中で、「中国は金融危機の入り口に立っている」とすでに述べている。中国経済のこうした本質を見抜いていたのである。そして、本を出した直後の昨年6月に、上海株が大暴落、8月にも続落している。津上さんは、「世界が中国に幻想を抱いていたのだ」とも語っていた。

これから中国は、どうなっていくのだろうか。今年3月16日に閉幕した全国人民代表大会(全人代)で、「第13次5カ年計画」が採択された。

そこでは、すべての国民が、ややゆとりのある生活を送ることができる「小康社会」を実現するために、今後5年間の経済成長目標として、2020年のGDPを、2010年の2倍にすると謳っている。しかし、今後、年平均6.5%以上の成長を続けなければ目標は達成できない。こんなことが果たして可能なのか。

習近平政権は、国有企業の整理、合併を進め、できれば民営化したいと考えている。だが、国有企業のトップにいるのは共産党員であり、彼らが既得権益を容易に手放すとは考えられない。共産党員が抵抗勢力なのだ。

さらに、国有企業の淘汰を無理に進めると、500万人から600万人の失業者が出ると推測される。下手をすると、かつてのソ連と同じように体制崩壊の恐れすらある。

中国がソ連の二の舞になることを習近平は恐れている。李克強首相は記者会見で、「中国経済は絶対にハードランディングしない。ソフトランディングをする」と強調した。

中国は、本当にソフトランディングができるのか。ハードランディング、つまり経済が破綻したとき、当然、日本経済への大きな影響は免れない。けっして対岸の火事ではないのだ。

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