カテゴリー別アーカイブ: ニュース解説
小沢さんの本音
田原総一朗です。 僕は、小沢さんは代表選に出たくなかったはずだと考えている。 出ると負けるからだ。 小沢さんの出馬に対する国民の反対の声は強い。 もし代表選に出馬して負ければ、小沢さんの政治生命は終わる。 小沢さんとしては、出馬しないで生きながらえる方法を考えていたのだと思う。 だから、出ない事を前提として鳩山さんを通して菅さんに色々注文を付けていた。 鳩山さんも小沢さんの気持ちを分かっていたはずだ。 だからこそ、何度も菅さんに会いに行き、妥協点を見いだそうとしたのだと思う。 問題は菅さんがどこまで妥協するかだった。 僕は菅・鳩山会談で、トロイカ+1を両者が了承した事で 小沢さんの出馬はないと思った。 トロイカ+1ということは、仙谷さんと枝野さんを外すということだからだ。 だが、後任の名前を小沢さん側が求めたのに対して、菅さんは出さなかった。 これが小沢さんが出馬を決意した要因だと思う。 小沢さんは本当は総理にはなりたくないのだと僕は思う。 小沢さんの出馬表明を見ても、 総理になって何をやりたいのか何も言っていない。 もし、小沢さんが代表選に勝ったら、総理大臣と党代表を分ける 「総代分離」になるのだろうか。 もしそうなったら、民主党は大変なことになる。
僕が関心を持てない理由
田原総一朗です。 はっきり言って、民主党の代表選はもう決着済みだと僕は思う。 菅さんの再選で決まり。鳩山さんもそれで賛成だ。 ただ、この機会に鳩山派や小沢グループの人達が 存在理由を示すために様々言っているだけだろう。 僕が、菅さんVS小沢さんに興味がないのは、 二人とも終わった人だと思うからだ。 民主党は菅さんと鳩山さんが繰り返し代表をつとめた後、 世代交代の為に岡田さんになり、 更に若返って前原さんへと世代交代が行われた。 前原がメール問題でしくじったので 奥座敷にいたはずの小沢が代表になったに過ぎない。 そして、小沢さんが西松問題で辞めたので、 退いたはずの鳩山さんが登場し、 鳩山が辞めると同じく退いたはずの菅さんが登場した。 単純に若返りが良いと言ってるのではない。 しかし、民主党に必要なのは、 古い人達の対立ではない。 だから、今回の民主当選には、僕は関心を持てない。
人がいいけど仕事をしない政治家と、 悪い事もするが仕事のできる政治家、 どちらが、国民にふさわしいか
「人がいいけど仕事をしない政治家と、 悪い事もするが仕事のできる政治家、] どちらが国民にふさわしいか」 と言う質問をうけた。 まず、仕事をしない政治家はいない。 どの政治家も懸命に仕事をしている。 選挙で当選するという事は、 尋常の努力では成しえない。 更に、いま日本は数々の難問を抱えている。 少なくとも政権党の政治家達は、 寝る時間を割いて頑張っているはずである。 さて、質問についてだが、 鳩山さんと小沢さんを比べるとわかりやすい。 鳩山さんはやたらに人が好い。 人々への心配り、配慮では誰にも負けないと思う。 だが、彼は権力闘争にはあまりにも関心がない。 例えば、普天間基地の問題で彼は、 沖縄にこれ以上迷惑をかけるのは良くないと考え、 移設先は国外、最低でも県外だと主張した。 この理念は良くわかる。 彼は移設先をグアムだと考えていたのである。 だが、アメリカとの交渉で抑止力の面で グアムはダメで沖縄だと決めざるを得なくなった。 一つにはアメリカとの交渉にも問題がある。 交渉とはギブアンドテイクである。 グアムに移設する代わりに 何をアメリカに提供しようと考えたのか。 こうした部分は通常何十年か立たないと公表されない。 しかし、僕は疑っている。 日本側が何か提供すると言ったのか。 言わなかったのではないか。 どうも鳩山さんを見ていると ギブアンドテイクという事は考えていないようだ。 更に、沖縄しかないとわかって 鳩山さんは一体何をしたのか。 僕は、鳩山さんに 「昨年の暮れに沖縄しかないとわかったら、 なぜ1月、2月に沖縄に飛んで 心から謝罪し説得をしなかったのか」 と問うた。 … 続きを読む
何をやってるんだ、民主党は
田原総一朗です。 昨年の9月、民主党の鳩山内閣が発足した時には 支持率は約70%あった。 それが、直近の朝日新聞の世論調査では21%と大急降下だ。 恐らく次に出る世論調査では20%を割るだろう。 なぜ鳩山内閣の支持率がこれほど暴落したのか。 一言で言えば、政権党として慣れていなくて 政権党としての認識がないことだ。 困ったことに、民主党には政権党としての意識がなく、 一方、自民党には野党としての認識がない。 両党とも国民に言うべき言葉を何も持ってない。 例えば昨日、前原国土交通相は 高速道路料金についての政府案を引っ込めた。 なぜ引っ込めたと言う説明がない。 もともと民主党は高速道路料金は 無料にするとマニフェストにうたっていた。 前原大臣も、 「高速道路料金無料化の少なくとも実験は行う」 と言明していた。 ところが、小沢幹事長が 自民党時代に高速道路料金を下げるために 用意していた2兆5千億で、なんと、 「新しい道路建設をする」 と言い出した。 参議院選挙の為のばらまきだろう。 前原大臣は、猛然と反対した。 ところが、小沢氏は 「前原君が何か言ってるが、興味もなければ関心もない」 と言い切った。 結局、前原大臣は小沢案をのまざるを得ず、 その為に作成した高速道路料金計画は 近距離では値上がりになる、と言う事になった。 前原大臣自身、矛盾しているとはわかっていながら、 小沢幹事長が「新しい道路建設をする」などとねじ込んだので、 こうした案を作らざるを得なかったのだ。 ところが、小沢幹事長は、 「こんな道路料金が上がる案などのめない」 と断言した。 小沢幹事長が、新しい道路を建設するなどと言った為に 前原大臣はやもなくこういう料金にしたのである。 … 続きを読む
普天間問題への僕の思い
田原総一朗です。 何人もの人から 「田原は鳩山首相や官邸を批判しておいて、 急に、マスコミが批判すると それを批判しだしたのはおかしい」 と、ご意見をいただいた。 率直に言うと僕は、 普天間基地の移設問題で鳩山首相は 本当は昨年のうちに沖縄へ行き誠意を持って謝罪し、 沖縄の人々と何度も話し合うべきだったと思う。 少なくとも、3月までには是非、沖縄に行くべきであった。 5月決着と言ってるのならば、これが限度であった。 だから僕は、 普天間問題で鳩山首相、並びに官邸や担当大臣たちも きわめて厳しく批判した。 5月4日に鳩山首相は沖縄訪問した。 首相になって初めてである。 あまりにも遅すぎる。 翌日、新聞各紙は鳩山一行の沖縄訪問を手厳しく叩いた。 朝日新聞から産経新聞までが競いあうように叩いた。 それを見て僕は違和感を覚えた。 僕も叩いたのだが、 各新聞が一様に叩いているので、 これは危ないと思った。 論調が一様になるとこれは危険だと感じる。 反対の立場に立たねばと思うのである。 各新聞はそれぞれ普天間問題を いかにすべきかを主張すべきである、と思った。 なぜ主張しないのだろう。 主張するのを恐れて、 批判に逃げているのではないかと感じた。 そこで、僕なら一体どうすべきなのか、 と言うことを考え、5月8日鳩山首相に会いにいった。 僕は、鳩山首相になぜ3月以前に沖縄へ行かなかったのかと聞いた。 なぜ、徳之島の15000人の反対集会の前に 徳田さんに会わなかったのかと聞いた。 鳩山首相の回りのスタッフがその必要がない、 と鳩山首相を止めたようだった。 5月4日の沖縄訪問も反対したようだった。 本当に遅すぎる、甘すぎると思う。 … 続きを読む
こんな首相は前代未聞だ
田原総一朗です。 鳩山首相の沖縄訪問には どの新聞もテレビもおおいに戸惑っているようです。 色んな表現はあるが、 ようするに戸惑っているのです。 なぜこの時期に沖縄を訪問したのか。 誰が考えても名護の市長選の前、 つまり昨年中に訪問すべきでした。 更に徳之島の三町長と会う前に 徳之島への移転を言ってしまった。 なぜわざわざ9万人反対集会の後に訪問するのか。 なぜ徳之島の1万5千人の反対集会の後に三町長と会うのか。 矛盾だらけです。 この矛盾だらけを、 なぜ、鳩山さんがやってしまうのかと言う疑問。 これを素直に言うのは幼稚すぎるとでも マスメディアは考えているのだろうか。 鳩山さんという人は、よほど育ちがいいのか、 事前の根回しとか裏工作をやる気が全くないらしい。 こんな首相は前代未聞である。 仲井真知事も名護の市長も徳之島の三町長も 呆れ返っているのではないか。 ところが鳩山首相にはひるみも絶望感も全くない。 これから何度でも沖縄を訪問すると言っている。 僕のような普通人には考えられないが、 鳩山さんは全て真っ正面こそ誠意、 事前工作や裏交渉などは不誠意だと考えているのではないか。 常識的には無茶苦茶だが、 意外に沖縄も徳之島も鳩山ペースに乗る。 少なくとも宇宙人首相は これしかないと思い込んでいるのだろうか。 さて、5月8日(土)午前10時~ BS朝日「激論!クロスファイア」は 「総理の沖縄訪問に成果なし 小沢氏には“起訴相当” 鳩山政権はもう限界…!? 民主党のキーマン直撃!」 です。 出演者は、 仙谷由人(国家戦略担当大臣) 細野豪志(民主党副幹事長) … 続きを読む
最初にお金を提示したのは田中角栄さんだった
検察審査会で小沢さんの政治と金の問題が起訴適応となった。 検察の不起訴がひっくり返ったわけだ。 小沢さんは一体どうするつもりなのか。 自民党が政権をとっていた時代は幹部に疑惑事件が生じると証人喚問や参考人招致に応じてきた。 ところが民主党は数の力で一切応じていない。 僕は、心情的には民主党がせっかく政権をとったのだから、何をどこまで出来るのか見守りたいのだが、なぜ鳩山さん、小沢さんは、敗北へ向けて走りたがるのか。僕だけでなく、民主党のほとんどの議員も困惑してるはずだ。 民主党の議員達はなぜそれを口に出して言えないのか。だらしないと思う。 小沢さんの問題は検察は不起訴と判定し、選ばれた市民達、検察審査会が起訴相当と判定した。 判定が対立したわけで、これで早急に判断を下すのは危険である。 小沢さんは少なくとも国会で説明すべきである。 ※ ※ 野中広務さんが、那覇市内での講演の中で、官房長官在任中に(98年7月~99年10月)、何人か評論家に機密費から数百万円を渡したことを明らかにした。 また、機密費の提供を拒否した評論家として野中さんが私の名前を挙げた。 http://bit.ly/aTrqJs この件で、私の公式サイトにも問い合わせがあった。 野中さんが言ったとおり、私は機密費は受け取りを拒否した。 そもそも最初にお金を提示したのは田中角栄さんだった。 貰う訳にはいかないが、断れば喧嘩になる。考えに考えて受け取らなかった。 それ以後は楽だった。 田中さんに断ったのだから貰う訳にいかない、と言うと誰もが納得してくれた。 私は、機密費を受け取らなかったことで、野中さんの顔を潰したことになる。 その私に対して、野中さんが筋を通してくれた。 それについては、うれしく思う。 さて、明日、5月1日(土)の 、BS朝日「激論!クロスファイア」(10:00~)は、「事業仕分け・第2弾の成果は!? “仕分け人”を直撃!」というテーマでお送りします。 ゲストは、 ・枝野幸男(行政刷新担当大臣、衆議院議員) ・蓮舫(民主党参議院議員)・高橋洋一(嘉悦大学教授) です。どうぞお楽しみに! それと、今晩の「朝まで生テレビ」のテーマは、「平成の龍馬は誰か?」です。 出演者は 藤末健三(民主党・参議院議員)今井雅人(民主党・衆議院議員)山本一太(自民党・参議院議員)浅尾慶一郎(みんなの党・衆議院議員)斎藤弘(日本創新党政策委員長、前山形県知事) 荒パスカル(通訳・翻訳家)猪子寿之(チームラボ(株)代表取締役社長)勝間和代(経済評論家)高橋洋一(元財務官僚)歳川隆雄(ジャーナリスト)堀江貴文(元(株)ライブドア社長)渡部恒雄(東京財団上席研究員) ぜひ見て下さい! ●脳科学の第一人者・茂木健一郎さんと徹底対論した最新刊 『アタマがよくなる勉強会』が大好評発売中! ⇒ http://bit.ly/dszllI (詳しい内容を、ご覧いただけます!) ●公式TWITTERも始めました。 田原総一朗の公式ツイッターはじめました。 よろしければぜひフォローください! ⇒ http://bit.ly/ceoj6j
金儲けは悪いことではない
私はひねくれものなので、このところ「倫理」と言う言葉が氾濫してるのがどうも気になる。 特にアメリカでサブプライムローンが破綻して、金融業界が混しリーマンブラザーズが倒産して金融パニックに陥った時から、この倫理と言う言葉が充満しだした。 アメリカの経営者達が金儲けばかり走り、倫理を破綻させてしまったのだと言うのである。 私は近江商人の末裔なので、「金儲けが悪い」と言われると、違うんじゃないかと言いたくなる。 企業という企業はどこも金儲けを考えている。金儲けを考えなければ企業は倒産する。 金儲けを考えない企業などは存在しない。 念を押しておくが、金儲けは決して悪いことではない。 私は幼稚園に上がる前から祖母に「三方善し、三方善し」と言う事を言われ続けた。 商人が金を儲けるには「三方善し」でなければならないと言うのである。 当時は「三方善し」の意味などはわからなかったが、「三方善し」と言う言葉だけは覚えた。 現在では、三方善しと言う言葉は割りあいによく耳にするようになった。 三方善しとは商人が金を儲けるにはまず「客にとって善し」そして「世間にとって善し」それで初めて「自分にとって善し」になる、という事だ。 まず、お客さんに喜んでもらわなければならない。 この商人から買った品物は質が良い、為になる、そして商人がとっても親切である、 と、お客さんが信用してもらう。信用してくれれば、二度も三度も買ってくれる。 つまり商売が持続する。 二番目は、世間にとって善し。 今の言葉で言えば、社会にとって善し、である。 社会とは、お客さんがいっぱいいるという事だ。 大勢のお客さんが、つまり社会がその商人の商品やサービスを信用してくれる。 となると、商売は繁盛する。 そこで最後に、自分にとって善しとなる。 つまり金が儲かるということである。 逆に言えば、三方善しでなければ金は儲からないのである。 ところが、アメリカの商売は日本とは全く違う。 アメリカやヨーロッパの国々は、キリスト教の文化である。 特にアメリカは、清教徒、つまりヨーロッパのピューリタン達がヨーロッパにうんざりし、 正しい生活を求めてやってきた国である。 彼らは聖書の教えに極めて忠実であった。 聖書には人のものは盗んではならない。人を騙してはならない。など多くの掟が記してある。 アメリカのビジネスマン達にとって、ビジネスとは聖書の教えに従って行うものであった。 それが倫理を守ることであり、秩序を守ることであった。 ところが70年代からアメリカの経済が不調になった。 80年代になると不調がどんどん激しくなった。 つまりアメリカで作った製品が売れなくなってきたのである。 逆に日本の製品がどんどん入ってきたのである。 アメリカ人の給料は高く、コストが高い。それに比べて日本の製品は質が高くて値段が安い。 つまり日本からの輸入がどんどん増えてアメリカの企業・産業界を強く圧迫するようになった。 80年代後半、日米経済摩擦が深刻化した。 これはアメリカの商品が売れず、日本の商品がどんど入ってくるので、アメリカが日本にイチャモンをつけたのである。 … 続きを読む
日本は北朝鮮と交渉すべきだ!
久々にブログを更新する。 前回の更新から、時間が経った。 その間、いろいろな意見をいただいた。 北朝鮮との関係について、私の考えを明らかにするため、 6月13日の朝日新聞に書いた記事を掲載する。 —————————————————————————————- 「北朝鮮と交渉せよ」2009.06.13 朝日新聞東京朝刊 —————————————————————————————- 5月25日午前、北朝鮮は地下核実験を実施した。06年10月以来、2度目の核実験である。さらに長距離弾道ミサイルの発射をもくろんでいるようだ。 北朝鮮は、4月5日に「人工衛星打ち上げ」と称して、長距離弾道ミサイルの発射実験を行った。さらに、「6者協議は必要なし、核施設の再稼働」との宣言を打ち出し、そして再度の核実験を実施した。なぜ北朝鮮は、わざわざ世界の国々、特に擁護派であるロシア、中国などの神経を逆なでする行為を連発するのであろうか。 金正日(キムジョンイル)総書記は、明らかに6者協議ではなく、米朝の2国間協議を望んでいるのである。 オバマ米大統領は就任前から「積極的に各国との対話を進める」と表明していた。そこで金正日は、オバマは早々に北朝鮮にアプローチしてくるものと思いこんでいた。ところがオバマは、アフガニスタン、イラク、イラン、パキスタン問題に忙殺されていて、北朝鮮に顔を向けなかった。そのため金正日は焦り、米国を強引に振り向かせるために、ミサイルの発射実験と核実験をした。 ミサイル発射実験に対して、日本は北朝鮮を制裁するための国連安全保障理事会決議を強く求めたが、中国が難色を示し、結局は拘束力のない議長声明となった。核実験には各国とも強い怒りを示していて、国連安保理決議にはなるものの、北朝鮮が頼りとする中国は、厳しい経済制裁には反対するはずで、米国がその中国をどこまで強く説き伏せられるかが注目されていた。 ところが、5月末から6月初頭にかけて、なんと米国のガイトナー財務長官が北京に飛び、胡錦濤(フーチンタオ)主席、温家宝(ウェンチアパオ)首相などと会談している。中国に、北朝鮮に対する厳しい制裁への同調を求めるのならば、クリントン国務長官が北京に飛ぶべきである。ガイトナーの訪中は当然、米国債などの買い入れを中国に「お願い」するためであろう。 このとき、スタインバーグ国務副長官が東京にいて、米、日、韓が中軸となって、極めて厳しい制裁決議を実現すると主張していたが、ガイトナーの言動と明らかに矛盾している。 そして10日に、国連安保理の常任理事国と日、韓の7カ国は北朝鮮に対する制裁決議案を最終合意した。予想はしていたのだが、問題の北朝鮮を出入りする貨物の検査義務化については、中国の主張通り、「国連加盟国に検査を要請する」という拘束力のない表現となった。核開発につながる資金・資産の移転や、人道・開発目的以外の北朝鮮への金融支援についても「阻止」が「行わないよう要請」にとどまった。つまり、米国が中国に大きく歩み寄る形となった。一方、強硬派のスタインバーグは、米国は国連安保理の決議とは別に、独自で北朝鮮制裁を実施することを打ち出している。 * 米国は、金正日の後継者に三男金正雲(キムジョンウン)が定まるという情報で、金正日の体調が予想外に悪く、核実験もこの事態にからんでいるととらえていて、金正日、いや北朝鮮自体の当事者能力をつかみかねているのではないだろうか。 そうであるならば、いまこそ日本の出番だと私は考える。 オバマ大統領は4月5日にチェコのプラハで、広島・長崎への原爆投下を指す「核を使用した唯一の保有国としての道義的責任」に触れて、「核のない、平和で安全な世界をアメリカが追求していくことを明確に宣言する」と強調した。これは画期的宣言である。 しかし、アメリカが「核を使用した唯一の保有国」であれば、日本はその核によって被爆させられた世界で唯一の国である。だから日本こそは、そして麻生首相は、オバマ大統領と組み、むしろ先導して、世界の核保有国に向けて非核化、核廃絶を強く求め、実現に取り組むべきなのである。 それに、北朝鮮の核は、端的にいえば、核を保有する米国や中国、ロシアにとっては現実には脅威ではないが、日本にとっては深刻な脅威である。さらに、ノドン150~320基が日本に向けていつでも発射できる状態になっているといわれている。 しかも、北朝鮮の経済復興のためには国交正常化に臨んで日本が提供する1兆円近い金が絶対になくてはならないのである。金正日はこのことがよくわかっていて、誰よりも日本からの金を待ち望んでいるはずである。 日本は、首相が2度も平壌に飛んで、金正日総書記と長時間会談した、他に例のない国である。その日本が、麻生首相が、中国や北朝鮮との交渉を米国にすべて委ねて、手をこまねいていてよいものなのか。 私は、日本こそが北朝鮮と交渉すべき、そして交渉する資格を他国以上に持っている国だと確信している。 だが残念ながら、現在、日本と北朝鮮との交渉は実質的には途絶えてしまっている。なぜ日本政府や外務省は本格的交渉に乗り出そうとしないのか。 * ブッシュ前米大統領が、08年10月に北朝鮮の「テロ支援国家指定」解除を決めたとき、私は外務省幹部に、ブッシュが指定を解除したのは、日本に対する裏切りではないのか、とただしたことがある。北朝鮮は、確たる根拠もないままに亡くなったと発表した8人の拉致被害者について、再調査すると約束はしたが、何ら責任を果たしていないからである。 「米国には北朝鮮との交渉を進める上で、二つの課題がありました。一つはもちろん非核化について詰めること。もう一つは日朝関係、つまり拉致問題の解決です。しかし彼らにとって主眼は、あくまで非核化です。拉致問題については、できる範囲でやりましょうという程度でした。そして、拉致問題に対しては、米国から言えば、もう日本には十分時間をやったという思いがあるんだと思います」 幹部官僚は慎重な口調で話した。だが話している内容は重大である。 米国から見ると、07年1月中旬にベルリンで開かれたヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)と金桂寛(キムゲグァン)北朝鮮外務次官との会談以来、日朝交渉のために1年以上の時間を与えてきたということなのだろう。にもかかわらず、日本は北朝鮮との交渉をろくに進めていなかった。そこでついにしびれを切らしたということなのか。 「交渉をしなかったということではなく、努力はしたのですよ。しかし、目に見えるかたち、つまり日本国民がこのかたちならば北朝鮮と交渉を進めることに納得するという見通しは、当分開けない。そこで米国は、これ以上我慢して待ってもムダだと判断した。一方、非核化交渉のほうは、ブッシュ大統領の任期切れが迫り、交渉を進展させるためには指定解除のカードの切りどきだと判断したのでしょう」 このとき幹部官僚の言った「日本国民がこのかたちならば北朝鮮と交渉を進めることに納得するという見通しは、当分開けない」とは、どういうことなのか。 実は、日本の外務省が何より恐れているのは、交渉相手の北朝鮮ではなく、日本の世論なのである。それにおびえるあまり、結果として、拉致被害者の確認作業からどんどん遠ざかってしまっている。 幹部官僚のいう「日本国民が納得するかたちの交渉」とは、端的に言えば、8人の拉致被害者の生存を確認して帰国させることなのである。それ以外の交渉は日本国民が納得せず、事実上できないということになる。 もしかすると日本政府は、本格的交渉をしないことが無難だと考えているのではないのか。だが、世論を恐れて本格的交渉を先延ばしにすることは、拉致被害者家族の人々にとっても無責任ということになるのではないか。 幹部官僚が興味深い述懐をした。 「小泉首相の訪朝の結果は、北朝鮮の思惑、そして小泉訪朝団の意図とも全く逆目に出てしまった。金正日総書記は拉致を行ったことを認めて謝罪した。工作船などについても謝罪した。そして拉致被害者5人とその家族を帰国させた。残る8人についてもデータを一応そろえた。これで日本の北朝鮮に対する憤りは鎮まり、日朝国交正常化への道が開けるものと期待していたのです。だが結果は全く逆に出た。日本国民の北朝鮮への悪感情が極限に達してしまった。これで日本側もすっかり自信を失った。北朝鮮側は、日本国民にどう対応していいかわからなくなってしまった」 * 私は、これが外務省のホンネなのだなととらえた。小泉首相の訪朝がトラウマになっているというわけだ。 … 続きを読む
北朝鮮ミサイル発射その後(4)
以前に書いたこととやや重複するが、あえて記す。 北朝鮮は、核実験もやった。ミサイルも撃った。今回のミサイル発射を日本はじめ国連が安保理の議長声明という形で非難すると、「6か国協議はヤメだ! 核開発も再開する!」と捨てゼリフを残して、北朝鮮は孤立の道をさらに深めようとしていると見える。なぜなのか。 一言でいえば、北朝鮮は孤立したくない。アメリカになんとか振り向いてほしい、話し相手になってほしい。だから、駄々をこね、悪さを繰り返し、気を引こうとしているのだ。 「瀬戸際外交」と呼ばれるが、同じように危機を煽る手を、北朝鮮は1993~94年の朝鮮半島危機のときも使った。このときは米クリントン大統領を相手にまんまとうまくいき、北朝鮮は代替軽水炉(発電所の建設)と重油(完成までの火力発電用)を手に入れた。 それを、クリントンと同じ民主党のオバマ大統領に対しても「もう一度」、というのが北朝鮮の狙いだ。だから、前にも言ったように「ラブレター」なのである。 北朝鮮は、日本円にして何百億円といったカネを投じてミサイルを開発し、国民が飢えに苦しんでも、どうということがない国。文字通り、失うものがない国なのだ。だから、あえて自分から態度を変える必要がない。たとえば、いま強硬路線を続けようが態度を軟化させようが、日朝国交回復も成立したときは、日本から数千億~1兆円というようなカネを引き出すことができるとわかっている。 だから、私たちは北朝鮮の一挙手一投足に右往左往する必要はない。まず、もっと落ち着くこと。そして、中長期の対北朝鮮戦略を立てることが肝心だ。 【了】