月別アーカイブ: 4月 2009

北朝鮮ミサイル発射その後(3)

なぜ日本政府は肝心の「ミサイルを撃たせないための戦略や戦術」に触れずに、「ミサイルを撃ってきたらどうするか」──たとえば、PAC3部隊をやイージス艦をもっと増やすべきだ、レーダー網や偵察衛星もさらに必要だ、という話しかしないのか。あるいは自民党政治家たちも、なぜ敵地攻撃論や核武装論という飛躍した話しかしないのだろう。 これは、今回のミサイル発射を防衛力増強のための千載一遇のチャンスととらえて、防衛予算を増やし自衛隊も増強し、日米安全保障体制をより磐石なものにしたいからである。 そのときいちばんジャマなのは憲法9条だから、これをなんとか改正したい。そして、イラク・サマワへの自衛隊派遣のような国際貢献もどんどん増やしたい。アフガンにも行きたいし、インド洋給油もしたいし、ソマリアにも行きたい。 それには、北朝鮮のミサイル発射で日本の危機を大々的にPRするのがよい。だから、ミサイルを撃ち落とすつもりなどハナからないにもかかわらず、あえて「迎撃」と言ったり、配備されていない地域にPAC3部隊を移動したりした。「空白地域」からは当然、防衛予算をつけて自分たちのところにも部隊を配備してほしいという要望が出る。 東京・市ヶ谷の自衛隊にまでPAC3の部隊を配置したが、あのような実戦部隊を市街地に置いて人目にさらすという作戦は、普通はありえない。本当の戦争では攻撃対象になるからで、今回はようするに、大々的なデモンストレーション作戦を展開したのだ。 そして、どうやらこのデモ作戦は、功を奏したようである。民主党・小沢一郎の問題もあってのことだが、麻生内閣の支持率が上向いたからだ。しかし、デモ作戦はデモ作戦と冷静に伝える姿勢が、マスメディアには必要だろう。 【つづく】

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北朝鮮ミサイル発射その後(2)

テレビ朝日『サンデープロジェクト』のいつもの視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区、世帯平均)は、8%前後といったところ。日曜昼前という時間帯だから、10%を超えれば大成功である。 それが4月5日の日曜は、分刻み視聴率(関東地区・世帯)で瞬間11%を超えた。終了まで15分を切り、番組中での発射はないかなと思い始めた11時32分すぎ、飛翔体発射の政府発表が飛び込んだ。 ところが、である。多少は予測していたことだが、ほぼ瞬時に視聴者の相当数がNHKにチャンネルを変えてしまったのだ。発表の30秒後に3%ほど落ち、次の1分間でまた同じくらい落ち、結局『サンプロ』の視聴率は6%まで落ちた。逆にNHKは一気に15%に跳ね上がった。これには参った。後で分刻みの視聴率表を見たときは、驚くと同時に、あんなに頑張ったのにと、ちょっと悔しい思いをした。 ようするに視聴者は、地震や台風など災害のときはNHKを見るものと決めている。今回は台風や暴風雨といった自然災害とはまったく違うものの、万々一の場合は天からミサイルの破片か何かが降ってくるかもしれず、「手の打ちようがない」という点で、ちょっと似ていたわけである。 しかし、北朝鮮のミサイル発射を地震や台風と同列の「困った災害」のようにとらえてしまう日本人の感覚そのものが、そもそも違うのではないか。 それが証拠に、日本は北朝鮮のミサイルが飛んで来たら地対空ミサイルPAC3でどうするという話ばかりしていた。撃たせないためにどうするかという話を、誰もしていない。ミサイルは地震や台風ではないのだ。私たちは、北朝鮮にミサイル撃たせないために、日本は中・長期的にどうするかという議論こそを、しなければならない。 【つづく】

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北朝鮮ミサイル発射その後(1)

ちょっとバタバタしていて、ブログ更新が遅れてしまった。すみません。 大騒ぎからやや時間がたってしまったが、きわめて重要な問題だから、あえて記しておきたい。いうまでもなく、以前にも一度ふれた北朝鮮のミサイル問題についてである。 北朝鮮は4月5日に、人工衛星の発射と称して3段ロケットを打ち上げた。先端に人工衛星が搭載されていたとしても、ロケット本体はミサイルと同じものだから、ここでは「ミサイル」と呼んでおく。 まず苦言を呈しておきたいのは、発射前に麻生太郎首相が「4日に発射」と断言したことだ。いやしくも日本国の総理大臣たる者が、発射日がいつなどという些細で、しかも不確定な問題に触れるべきではない。「日本が4日発射と言ったから、1日ズラして恥をかかせようじゃないか」と思っても、何の不思議もない国を相手にしているのだ。この種の問題は「インテリジェンス(諜報)の機微に触れるからノーコメント」と言うものである。 さて5日は、テレビ朝日『サンデープロジェクト』の生放送中に発射されるかもしれない状況だった。そこで番組は、10時~11時45分の始めから終わりまで北朝鮮ミサイル問題だけでいこうと決めた。新聞ラテ欄にも「番組中テポドン発射?」と出した。局内には、いささかならぬ抵抗があったのだが、泥酔事件で評判の悪い自民党の中川昭一を呼び、民主党の前原誠司と徹底討論してもらうことにした。 視聴者の関心も強かったのだろう。視聴率もうなぎ登りとなった午前11時32分すぎ、「北朝鮮から飛翔体が発射された模様」との日本政府発表が飛び込んできた。 【つづく】

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『崩壊自民の裏のウラ』(2)……自民党支配の終焉

前回に引き続き、『崩壊自民の裏のウラ』(朝日新聞出版刊)の話だ。 本書に載せた『週刊朝日』のコラム「田原総一朗のギロン堂」を書いた期間は、2006年7月から08年10月だ。「自民党支配の終焉」と題した冒頭20ページほどと、小沢一郎、福田康夫、安倍晋三についての小論各2ページは、2009年2月に書き下ろしたものである。 06年7月~08年10月というわずか2年ちょっとの間に、日本はなんという大激震に見舞われたのかと、できあがった本を手にして改めて思う。 しかも、この間に日本には、小泉純一郎(06年9月まで)、安倍晋三(07年9月まで)、福田康夫(08年9月まで)、麻生太郎(現職)という4人の内閣総理大臣がいたのである。 小泉は2001年4月から5年5か月、戦後首相では佐藤栄作、吉田茂に次ぐ歴代第3位の長期政権だからいいが、安倍と福田はわずか1年で政権を放り出してしまった。本を1冊出す間に首相が3回も交代するのでは、おちおち政治の本も書けないではないか。  それはともかく、私は書き下ろしの論考に「2009年は衆議院総選挙の年である。自民党と民主党の対決を軸とする今回の総選挙は、日本では半世紀ぶりの、きわめて劇的で、スリリングな選挙になるはずである」と書いた。自民党の弱体化についても、利益配分政治の限界、自民党派閥の解体、世襲議員の氾濫という三つの理由を挙げて論じている。 みなさんには、この本に記した分析や考え方を手がかりに、日本の政治の現在についてじっくり考えてもらいたいと思うのだ。

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『崩壊自民の裏のウラ』(1)・・・コラム「田原総一朗のギロン堂」が本に

私は『週刊朝日』で「田原総一朗のギロン堂」というコラムを連載している。 永田町の問題、つまり政治の話が多いが、国内政治以外にも国際、経済、社会、メディアなど、そのときどきで「いま、この問題についてどうしても発言しておかなければ」と思うテーマがあれば、なんでも書く。 改めて振り返ると、メディアの問題を論じた原稿が、けっこう回を重ねている。私は、自らの身を安全地帯において政府批判ばかり繰り返し、自ら提案をしないメディアの姿勢をきわめて問題だと思っているから、そのことを繰り返し書いている。天皇、憲法、戦争と平和、若者などについても、折に触れて発言している。 テレビ朝日『サンプロ』をはじめとするテレビの仕事は、まさに生放送。「いま」が命だから、どうしてもめまぐるしく変わる状況に反応し、瞬間瞬間にこだわることになる。ところがコラムでは、若者がふと漏らした一言に「おやっ」と思い、2、3日あれこれ考えさせられて1本を書き上げるということがある。書くことは考えをまとめるのに欠かせない作業なのだ。だから私は、『週刊朝日』の連載をとても大切にしている。 このコラムが2年分ほどたまったので、本にした。それが『崩壊自民の裏のウラ』(朝日新聞出版刊)である。 毎回の原稿に、書いたときの状況などを解説するリードをつけ、冒頭に次の総選挙の意味を考える論考を加えてある。この2年を俯瞰できるようになっているので、連載の読者にも是非、手にとってもらいたいと考えている。

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北朝鮮ミサイル発射の真の意味は?

北朝鮮が、4月4日~8日という期限を予告して、「人工衛星を搭載」と称する長距離弾道ミサイルを打ち上げようとしている。 日本は、打ち上げに失敗し破片その他が領域内に落下する場合は「迎撃」するとして、日本海にイージス艦、東北地方に地対空ミサイルPAC3の部隊を展開中だ。これはみなさん、テレビや新聞の報道でご存じだろう。 一方でアメリカのゲーツ国防長官は、FOXテレビで「ハワイに向かってくるようなら迎撃も考慮するが、その計画はない」と述べた(3月29日)。韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領も、「北韓(北朝鮮)のミサイル発射に軍事的に対応することには反対」と述べた(英『フィナンシャル・タイムズ』3月30日付)。つまり、「迎撃」などと大騒ぎしているのは日本だけだ。どういうわけか? 今回のミサイル発射を私は、北朝鮮がアメリカに対して、「こっちを向いてくれ」「北朝鮮をかまってほしい」とアピールした「ラブレター」だと見ている。 食糧難、エネルギー逼迫《ひっぱく》、劣悪な経済状況に加えて、金正日(キム・ジョンイル)の病気や後継問題と、さまざまな問題を抱える北朝鮮は、原爆実験を強行したものの、ますます孤立化を深めている。そこで、なんとか自分たちのことを世界に認めさせ、自分たちの要求をある程度まで認めさせたいと、盛んに画策する。 そのターゲットは、いうまでもなくアメリカだ。アメリカさえ認めてくれれば、北朝鮮という国は存続できる。だから北朝鮮は、過去にも危機を煽る「瀬戸際外交」を繰り返し、アメリカとの二国間交渉にこだわり、アメリカに「こちらを向いて」と訴え続けてきた。今回も同様で、長距離ミサイル発射は2009年1月に誕生した米オバマ政権にむけて、熱いラブレターを送ったのだ。 だからこそアメリカは、北朝鮮を過度に刺激することは避け、事態を静観している。送りつけられたラブレターに、「こんなものは二度と寄こさないで」と返事を出したら、相手は「手紙が来た。脈があるかも」と喜ぶかもしれない。無視するのがいちばん、というわけである。 他人向けのラブレターに対して大騒ぎするのはみっともない話だ、と私は思っている。壊れて落ちてくるものを撃墜するのも、「迎撃」というよりは「事故処理」だろう。国連安保理決議違反だと国際的に協調して動くのはよいが、日本だけ突出することが得策とも思えない。官房長官も言っていたが、日本人はもっと落ち着いて、悠然と構えていたほうがよいのである。

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