月別アーカイブ: 7月 2009
NHKの「ようこそ先輩」収録を終えて
NHKの「ようこそ先輩」という、母校で授業をする番組に出演する事になった。 僕は、滋賀県彦根市の母校の佐和山小学校の6年生に授業をする事にした。 一体、何を教えようと考えた。 実は僕が佐和山小学校の5年生の夏休みに日本が戦争に負けた。 このことで僕の人生も考えたかも価値観も180度変わった。変わらざるを得なかった。 佐和山小学校の5年生の夏休みまで、その事をぜひ授業でやりたいと思った。 今の6年生はもちろん戦争の事は知らないし、戦争への関心もないだろう。 だからこそ、僕が体験した劇的な転換についてぜひ話をしたいと思った。 実は小学校5年生の1学期まで、僕らの将来は陸軍になるか海軍に進むかの2つの選択しかなかった。僕は、陸軍は行軍が大変だから、海軍ならば甲板の上で歩く距離がしれている、それに海軍の士官はカッコよかった。だから海軍に行こうと思っていた。 更に5年生の一学期まで、先生も校長先生も市長も偉い人たちも「君らは天皇陛下のために死ね、君らの寿命は二十歳で終わりだ、大東亜共栄圏のためにその捨石になれ」と教えられた。教育というものは怖いもので、僕はそれを信じ込んでいた。 ところが戦争に負けて二学期になると先生も校長先生も皆「日本の戦争は悪い戦争だった。戦争をするのは人でなしだ。戦争には絶対に反対しろ、もし戦争が起きるようなことがあれば身体をはって止めろ、平和こそ大事だ」と、言うことが180度変わった。 僕は大いに戸惑った。訳がわからなくなった。いやおうなく自分で考えざる得なくなった。 その時の困惑・矛盾を今の6年生に話してみたいと思った。 佐和山小学校の6年1組の教室に入ったとき、僕はいささかならぬ緊張をした。 第二次大戦の話に子供達が興味を持ってくれるかどうか、そして孫のような子供達が、 僕のような老人の話しに興味を持ってくれるのか心配した。 が、子供達は戦争の話に大いに興味を持ってくれた。小学校5年生の1学期までの体験、そして2学期での大きな変化、子供たちは目を輝かせて聞いてくれた。非常に分かりがよいので驚いたくらいだ。 実はこの授業は1日目に話をして宿題を出し、2日目に子供達のレポートを聞いてディスカッションをすることになっている。僕は思い切って、日本は戦争に負けたのだが、負けたことは日本人にとって悪かったか、それとも良かったのかという事を宿題にした。 おばあさんやおじいさん、あるいは近所や親戚のお年寄りたちにその事を聞いてほしい、と求めた。子供達は5つのグループに分かれて話を聞いてきた。 2日目、なんと全員が戦争に負けてよかった、という事になってしまった。これではディスカッションができない。困ったと思っていると、1日目に活発に質問などした男の子2人が「皆が負けて良かったのでは先生困るでしょうから、僕たち、負けたのが悪かったになるよ」と言ってくれた。ここまで柔軟性があるとは驚いた。ディスカッションはとても面白かった。 子供達の話し合いで僕自身がとてもたくさん発見があった。 僕ら戦争を知っている世代の気持ちは、戦争に負けて良かった、なぜなら世の中平和になった、戦死する人も空襲でなくなる人もいなくなった、生活も楽になった。その代わり助け合いの気持ち連帯感というのもがなくなった、と思っている人が多いと思う。 今の小学校6年生の子供達は、初めから平和なのと高度成長も知らない、バブルも知らない、生活は結構きつくなっている。彼らの発言でなるほどと思った。 「僕たちは人を思いやる心、連帯感、助け合いの姿勢は無くしていませんよ」と言われた。 とかく年寄りは「今の若いものは」と嘆く。それは若い者がダメなのではなく、年寄りの発想と若者の発想が異なるだけなのだ、という事を発見した。 貴重な2日間だった。
「写楽 幻の肉筆画」展
ギリシャの美術館で発見された写楽の肉筆画が、歌麿や北斎などの浮世絵と一緒に日本にやってきた。(江戸東京博物館で9月6日まで開催) 写楽とは謎につつまれた画家である。 寛政6年(1794年)に彗星のように現われて、約10ヶ月の間に、役者絵や相撲絵を144枚描いて消息を絶った。当時の役者絵は現在のブロマイドにあたり、いずれも美男でカッコよく描いているのだが、写楽の絵は役者の個性のありのままを描いていて、ブロマイドからは大きく逸脱していた。 今回の肉筆画も写楽ならではの迫力に満ちている。
日本は北朝鮮と交渉すべきだ!
久々にブログを更新する。 前回の更新から、時間が経った。 その間、いろいろな意見をいただいた。 北朝鮮との関係について、私の考えを明らかにするため、 6月13日の朝日新聞に書いた記事を掲載する。 —————————————————————————————- 「北朝鮮と交渉せよ」2009.06.13 朝日新聞東京朝刊 —————————————————————————————- 5月25日午前、北朝鮮は地下核実験を実施した。06年10月以来、2度目の核実験である。さらに長距離弾道ミサイルの発射をもくろんでいるようだ。 北朝鮮は、4月5日に「人工衛星打ち上げ」と称して、長距離弾道ミサイルの発射実験を行った。さらに、「6者協議は必要なし、核施設の再稼働」との宣言を打ち出し、そして再度の核実験を実施した。なぜ北朝鮮は、わざわざ世界の国々、特に擁護派であるロシア、中国などの神経を逆なでする行為を連発するのであろうか。 金正日(キムジョンイル)総書記は、明らかに6者協議ではなく、米朝の2国間協議を望んでいるのである。 オバマ米大統領は就任前から「積極的に各国との対話を進める」と表明していた。そこで金正日は、オバマは早々に北朝鮮にアプローチしてくるものと思いこんでいた。ところがオバマは、アフガニスタン、イラク、イラン、パキスタン問題に忙殺されていて、北朝鮮に顔を向けなかった。そのため金正日は焦り、米国を強引に振り向かせるために、ミサイルの発射実験と核実験をした。 ミサイル発射実験に対して、日本は北朝鮮を制裁するための国連安全保障理事会決議を強く求めたが、中国が難色を示し、結局は拘束力のない議長声明となった。核実験には各国とも強い怒りを示していて、国連安保理決議にはなるものの、北朝鮮が頼りとする中国は、厳しい経済制裁には反対するはずで、米国がその中国をどこまで強く説き伏せられるかが注目されていた。 ところが、5月末から6月初頭にかけて、なんと米国のガイトナー財務長官が北京に飛び、胡錦濤(フーチンタオ)主席、温家宝(ウェンチアパオ)首相などと会談している。中国に、北朝鮮に対する厳しい制裁への同調を求めるのならば、クリントン国務長官が北京に飛ぶべきである。ガイトナーの訪中は当然、米国債などの買い入れを中国に「お願い」するためであろう。 このとき、スタインバーグ国務副長官が東京にいて、米、日、韓が中軸となって、極めて厳しい制裁決議を実現すると主張していたが、ガイトナーの言動と明らかに矛盾している。 そして10日に、国連安保理の常任理事国と日、韓の7カ国は北朝鮮に対する制裁決議案を最終合意した。予想はしていたのだが、問題の北朝鮮を出入りする貨物の検査義務化については、中国の主張通り、「国連加盟国に検査を要請する」という拘束力のない表現となった。核開発につながる資金・資産の移転や、人道・開発目的以外の北朝鮮への金融支援についても「阻止」が「行わないよう要請」にとどまった。つまり、米国が中国に大きく歩み寄る形となった。一方、強硬派のスタインバーグは、米国は国連安保理の決議とは別に、独自で北朝鮮制裁を実施することを打ち出している。 * 米国は、金正日の後継者に三男金正雲(キムジョンウン)が定まるという情報で、金正日の体調が予想外に悪く、核実験もこの事態にからんでいるととらえていて、金正日、いや北朝鮮自体の当事者能力をつかみかねているのではないだろうか。 そうであるならば、いまこそ日本の出番だと私は考える。 オバマ大統領は4月5日にチェコのプラハで、広島・長崎への原爆投下を指す「核を使用した唯一の保有国としての道義的責任」に触れて、「核のない、平和で安全な世界をアメリカが追求していくことを明確に宣言する」と強調した。これは画期的宣言である。 しかし、アメリカが「核を使用した唯一の保有国」であれば、日本はその核によって被爆させられた世界で唯一の国である。だから日本こそは、そして麻生首相は、オバマ大統領と組み、むしろ先導して、世界の核保有国に向けて非核化、核廃絶を強く求め、実現に取り組むべきなのである。 それに、北朝鮮の核は、端的にいえば、核を保有する米国や中国、ロシアにとっては現実には脅威ではないが、日本にとっては深刻な脅威である。さらに、ノドン150~320基が日本に向けていつでも発射できる状態になっているといわれている。 しかも、北朝鮮の経済復興のためには国交正常化に臨んで日本が提供する1兆円近い金が絶対になくてはならないのである。金正日はこのことがよくわかっていて、誰よりも日本からの金を待ち望んでいるはずである。 日本は、首相が2度も平壌に飛んで、金正日総書記と長時間会談した、他に例のない国である。その日本が、麻生首相が、中国や北朝鮮との交渉を米国にすべて委ねて、手をこまねいていてよいものなのか。 私は、日本こそが北朝鮮と交渉すべき、そして交渉する資格を他国以上に持っている国だと確信している。 だが残念ながら、現在、日本と北朝鮮との交渉は実質的には途絶えてしまっている。なぜ日本政府や外務省は本格的交渉に乗り出そうとしないのか。 * ブッシュ前米大統領が、08年10月に北朝鮮の「テロ支援国家指定」解除を決めたとき、私は外務省幹部に、ブッシュが指定を解除したのは、日本に対する裏切りではないのか、とただしたことがある。北朝鮮は、確たる根拠もないままに亡くなったと発表した8人の拉致被害者について、再調査すると約束はしたが、何ら責任を果たしていないからである。 「米国には北朝鮮との交渉を進める上で、二つの課題がありました。一つはもちろん非核化について詰めること。もう一つは日朝関係、つまり拉致問題の解決です。しかし彼らにとって主眼は、あくまで非核化です。拉致問題については、できる範囲でやりましょうという程度でした。そして、拉致問題に対しては、米国から言えば、もう日本には十分時間をやったという思いがあるんだと思います」 幹部官僚は慎重な口調で話した。だが話している内容は重大である。 米国から見ると、07年1月中旬にベルリンで開かれたヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)と金桂寛(キムゲグァン)北朝鮮外務次官との会談以来、日朝交渉のために1年以上の時間を与えてきたということなのだろう。にもかかわらず、日本は北朝鮮との交渉をろくに進めていなかった。そこでついにしびれを切らしたということなのか。 「交渉をしなかったということではなく、努力はしたのですよ。しかし、目に見えるかたち、つまり日本国民がこのかたちならば北朝鮮と交渉を進めることに納得するという見通しは、当分開けない。そこで米国は、これ以上我慢して待ってもムダだと判断した。一方、非核化交渉のほうは、ブッシュ大統領の任期切れが迫り、交渉を進展させるためには指定解除のカードの切りどきだと判断したのでしょう」 このとき幹部官僚の言った「日本国民がこのかたちならば北朝鮮と交渉を進めることに納得するという見通しは、当分開けない」とは、どういうことなのか。 実は、日本の外務省が何より恐れているのは、交渉相手の北朝鮮ではなく、日本の世論なのである。それにおびえるあまり、結果として、拉致被害者の確認作業からどんどん遠ざかってしまっている。 幹部官僚のいう「日本国民が納得するかたちの交渉」とは、端的に言えば、8人の拉致被害者の生存を確認して帰国させることなのである。それ以外の交渉は日本国民が納得せず、事実上できないということになる。 もしかすると日本政府は、本格的交渉をしないことが無難だと考えているのではないのか。だが、世論を恐れて本格的交渉を先延ばしにすることは、拉致被害者家族の人々にとっても無責任ということになるのではないか。 幹部官僚が興味深い述懐をした。 「小泉首相の訪朝の結果は、北朝鮮の思惑、そして小泉訪朝団の意図とも全く逆目に出てしまった。金正日総書記は拉致を行ったことを認めて謝罪した。工作船などについても謝罪した。そして拉致被害者5人とその家族を帰国させた。残る8人についてもデータを一応そろえた。これで日本の北朝鮮に対する憤りは鎮まり、日朝国交正常化への道が開けるものと期待していたのです。だが結果は全く逆に出た。日本国民の北朝鮮への悪感情が極限に達してしまった。これで日本側もすっかり自信を失った。北朝鮮側は、日本国民にどう対応していいかわからなくなってしまった」 * 私は、これが外務省のホンネなのだなととらえた。小泉首相の訪朝がトラウマになっているというわけだ。 … 続きを読む