普天間問題はこじれにこじれているが、日米の関係を考える絶好のチャンスだと思う。
当初、鳩山さんが普天間基地をグアムに移設することを考えていた。
ところがアメリカがグアムはNO、と言ってきた。
理由は「抑止力」であった。
東西冷戦は終った。だけど、アフガン戦争は続いている。
北朝鮮の危機もある。中国が軍事力を拡大している。
だから、アジアの安全平和のための抑止力として、普天間の移設先は沖縄でなければならない、と言うのである。
それでは「抑止力」とはなんなのか?
これまで、私達日本人は、抑止力を真剣に考える事をしなかった。
実は日本とアメリカの関係は、日米安保条約を含めて冷戦の時代にできたものである。
20年前に冷戦は終った。
だから日米関係も、ポスト冷戦にふさわしい関係を再構築すべきである。
僕は、鳩山さんにオバマ大統領と会った時に、なぜこれから日米のトップ、そして関係者達が時間をかけ回を重ねて新しい日米関係を構築しよう、その体制を作ろう、と言わずに「トラストミー」なんて言ったのか、と問うた。
鳩山さんは、よくなかったかもしれない、と答えた。
さて、新しい日米関係を構築するにしても、抑止力をどう考えるかが問題である。
僕は、中曽根さんと対談した時に「東西冷戦が終ったと言う事は、世界が平和になることではない」と言った。
中曽根さんは「冷戦が終ったという事は、神が人類にくれた平和を考える為の安定した時間」だと話した。
ところが、すぐにイラクがクエートを侵攻する、という事件が起きた。
そして、イラクがイスラエルと対立しているパレスチナを露骨に支援しだした。
東西冷戦は終ったが、アラブ問題が厄介な事態となった。
2001年に9.11が起きた。
アメリカは怒り、ビンラディンをやっつけようとアフガン戦争が始まった。
更にイラク戦争が始まった。
また、アメリカとイランの関係が急速に悪化した。
東西冷戦とは違う複雑な戦乱の時代となった。
北朝鮮が核実験をし、アジアの安定も壊れた。
僕は、冷戦が終って米軍が沖縄から撤退する日が遠くはない、と考えていた。
だが、そうはならなかった。
イラク戦争にも沖縄基地が使われ、アフガン戦争にも重要なアメリカの拠点となっている。
抑止力という言葉が、新たな現実性を帯びてきたのである。
抑止力など虚の理屈だという意見もある。
だが、僕はジャーナリストとして、理想は求めるが現実から遊離するわけにはいかない。
抑止力など関係ないとは言い難い。
僕は、鳩山首相はいきなり普天間の移設を持ち出すのではなく、日米関係を将来どうするか、
沖縄からグアムに移転、という計画をどのように進めるのか、こういう論議をこそ始めるべきだったと思っている。
選挙の時に、いきなり「普天間を国外、最低でも県外」と言ったのは、気持ちはわかるが、野党ゆえの軽はずみだと判断せざるを得ない。
5月28日の日米共同声明は、結局、普天間基地をずっと続ける、という宣言でしかなかった。
沖縄県民にとっても最悪の事態である。
僕は、鳩山首相、或いは後継首相は、数ヶ月という単位ではないが、沖縄基地のグアムへの転換を真剣にアメリカと討議すべきだと思う。